整理と雑記

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『性別「モナリザ」の君へ。』と「性別の単純化」

『性別「モナリザ」の君へ。』を通して人々の性別の認識について書いていく。

www.ganganonline.com

この記事は以下の作品のネタバレを含む。

  • 性別「モナリザ」の君へ。
  • 選択のトキ
  • 境界のないセカイ

性別「モナリザ」の君へ。

『性別「モナリザ」の君へ。』のあらすじは以下の通りである。

この世界で人間は12歳を迎える頃、自分がなりたい性へと次第に身体が変化していき、14歳になる頃には男性か女性へと姿を変えてゆく。 でも自分だけは性別がないまま、18度目の春を迎えた…。
引用元:性別「モナリザ」の君へ。 | ガンガンONLINE | SQUARE ENIX

主人公のひなせは性自認が不確かなまま18歳を迎えた。ひなせは幼馴染の「しおり(男性)」と「りつ(女性)」がそれを受け入れ何も変わらずに日々を過ごせるのが幸せだった。しかし、2人の告白をきっかけにひなせは性別の選択を迫られてしまう。

関連性のある作品

「性別を選択する」というテーマにおいて本作と関連性のある作品がいくつかある。私が浮かんだのは『選択のトキ』と『境界のないセカイ』である。

選択のトキ

『選択のトキ』は主人公の守屋光晴が性別が後天的に決定する宇宙人「カーマイン星人」であるトキと出会う、という物語である。カーマイン星人は15歳になるにあたって自分自身の選択で性別を決定するのだが、トキはその選択を重要視していない。トキは自分が「恋人」でいてほしいなら「女性」を選択し「友達」でいてほしいなら「男性」を選択してほしい、と選択権を光晴に委ねてしまう。

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引用元:選択のトキ 第1話

jumpsq.shueisha.co.jp

境界のないセカイ

『境界のないセカイ』は18歳以上の国民すべてが自らの意思で自由に性別できる制度「性選択制度」が存在する世界を舞台とする物語である。

この作品では主人公の大槻勇次が3人のヒロインとの交流が描かれる。

  • 内田啓子(啓太郎):男性として生まれるが、自らの意思で性選択によって女性を選択した。恋愛対象は男性。
  • 本城聡美:女性として生まれるが、プロのスポーツ選手としてキャリアを積むために男性になる選択を強いられた。恋愛対象は男性。
  • 橘高晶輝:女性として生まれるが、両親の意向により幼い頃に海外で男性へ性転換させられた。恋愛対象は男性。

comic-walker.com

性別の単純化

3作品を読んで感じたのは「性別が人間関係を決定する」という点が共通しているということだった。

選択のトキの場合

『選択のトキ』でトキは第1話で光晴はトキに友達宣言をされており、トキが男性になる方向で話が進行する。しかしトキは光晴に好意を持った女性、安達が現れた途端に自身が恋人であると嘘をつく。

トキは光晴が自分とは違う女性と恋人関係になった場合、自分との関係性が維持できないと思ったと安達に打ち明けている。同性同士では友達にはなれても恋人同士になれない、異性でなければ相手にとって1番大切な存在にはなれない、トキはそう考えていた。

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引用元:選択のトキ 第4話

境界のないセカイの場合

『境界のないセカイ』で大槻勇次と本城聡美は一時恋人関係になるものの、聡美が男性に性転換を機に関係が「恋人」から「友達」に変わった。その後、聡美は恋人関係に戻るのは選手生命を終え、女性に戻った時と発言している。

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引用元:境界のないセカイ 第22話

聡美と別れた後、勇次と橘高晶輝は「女性に戻れたら」恋人関係になろうと約束した。しかし晶輝が不完全な手術を行った結果、女性に戻れない身体だということが発覚する。もう女性に戻れないと知った晶輝は勇次と結ばれることはないと自らの命を断とうとしてしまう。

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引用元:境界のないセカイ 第22話

性別「モナリザ」の君へ。の場合

『性別「モナリザ」の君へ。』ではひなせは幼馴染の「しおり(男性)」、「りつ(女性)」のそれぞれから交際が申し込まれる。ひなせへの告白シーンは「私がひなせを男にする」「俺がひなせを女にする」という言葉が使われた。この告白をきっかけにひなせは「性別の選択」を強制される形になった。

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引用元:性別「モナリザ」の君へ。 第1話


いずれの作品も恋人関係を結ぶにあたって「同性」であるか「異性」であるかという点にかなり縛られていた。それは「見た目」の問題でも「身体」の問題でも「心」の問題でもなく純粋に「性別」がどちらかということだ。

性別が選択できる世界にいた勇次は聡美が「男性となる」ことを機に恋人関係が終えてしまい、性的違和を抱える橘高晶輝に対して「女性に戻れたら」恋人関係を結ぼうと口にした。性別のないトキは「同性=友達」「異性=恋人」とカテゴライズしていた。そしてりつとしおりは性別が確定していないひなせと恋人になるために性別の選択を迫った。

これらが示すのは性別は複雑なものであるにも関わらず「男性」と「女性」の2つに単純化されてしまう傾向にあるということだ。りつとしおりが口にした「私がひなせを男にする」「俺がひなせを女にする」という言葉はこのような性別の単純化を象徴するものである。

単純化できない性別

性別を「男性」「女性」に単純化して理解しているとしたが、ひなせはいずれにもあてまらず自分を定義することができない。

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引用元:性別「モナリザ」の君へ。 第1話

定義とは「物事の意味・内容を他と区別できるように、言葉で明確に限定すること。*1」であり、定義が一般的に広く知られた時それは人々の共通認識となる。

ひなせのような存在はそもそも言葉として上手く表現しきれない部分がある。例として挙げられるのが三人称代名詞である。ひなせは「彼」ではなく「彼女」というわけでもない。海外では2015年にテネシー大学が「he」と「she」に加えて第三の性にあたる「ze」の使用を呼びかけ話題となった。ひなせはきっと「ze」にあたるのだろう。しかし「ze」にあたる日本語はまだない。ひなせは未だ日本語から切り離されている。言語にはまだ欠陥があるということだ。

irorio.jp



本作のタイトルで「モナリザ」という性別を定義しているが、ひなせ自身はそれにあてはまらないとしている。性別の選択を迫られてしまったひなせは「男性」「女性」「モナリザ」のいずれになるのだろうか。それとも全く違う選択をするのだろうか。そもそも性別は選ばなければならないのだろうか。『性別「モナリザ」の君へ。』はそんな性別の複雑さを示す物語である。




以下はKindleへのリンクである。

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性別「モナリザ」の君へ。 1巻 (デジタル版ガンガンコミックスONLINE)

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選択のトキ 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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境界のないセカイ (1) (カドカワコミックス・エース)

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