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夜は短し歩けよ乙女、小説と映画の相違【先輩と黒髪の乙女の会話について】

先日「夜は短し歩けよ乙女」の映画を見たので小説と映画の相違点を整理していた。

書いていたらとても長くなってしまいそうだったので分割することにした。

今回は先輩と黒髪の乙女の会話について整理する。

以降は小説及び映画のネタバレが発生する。

小説では第一章では名前も覚えていなかった黒髪の乙女が第二章の絵本の件をめぐって先輩に恩を感じ、第三章の偏屈王で先輩を男性として意識をし始め、第四章で恋に落ちるという過程が存在する。映画では第一章と第二章で先輩と黒髪の乙女の会話は消え去っている。第三章では舞台上のみの会話に留まっており、先輩と黒髪の乙女がきちんと会話を交わすのは最終章となる第四章まで待つことになる。そのため黒髪の乙女が先輩のことを意識し始める展開がいささか唐突に感じる。一方でナカメ作戦(ナるべくカのじょのメにとまる作戦)としては確かに目に留まっているだけになっているため映画の方がある意味ナカメ作戦っぽい展開とも言える。

以下は各章の比較である。

第一章

基本的な話の流れは共通であるが、李白の電車で行われる飲み比べ以降の展開が異なる。

小説

李白の電車の屋上にて竜巻に巻き上げられていた東堂の鯉が降ってくる。喜びのあまり東堂は黒髪の乙女に抱きつき接吻を交そうとする。このピンチを会話のきっかけとするべく先輩が黒髪の乙女の助けに入るものの、黒髪の乙女は東堂におともだちパンチを喰らわせ古池に叩き込んでしまう。その後、東堂の鯉が頭に直撃してしまった先輩に対して黒髪の乙女が気遣いを見せる。

映画

東堂の鯉が降ってこない。借金がチャラになった喜びから東堂が抱きついてくるが、即座におともだちパンチを喰らわせる。先輩は東堂が黒髪の乙女に抱きつく場面を目にしておらず、李白の電車の屋上にあったズボンの入手に四苦八苦している。その後、先輩が黒髪の乙女にうっかり股間を晒す羽目になりおともだちパンチによって川に突き落とされる。

補足

  • 原作にある東堂が黒髪の乙女に接吻を交わそうとするシーン及び東堂が黒髪の乙女に抱きつく要因になる鯉が降ってくるシーンは第三章のシナリオの一部として取り込まれる。

第二章

過程は異なるが先輩が黒髪の乙女の思い出の絵本「ラ・タ・タ・タム ─ ─ ちいさな機関車のふしぎな物語─ ─」の入手に奮闘する点は共通している。

小説

先輩は古本市の神様によって「ラ・タ・タ・タム」の入手に阻止される。古本市の神様によって本来あるべき場所に戻った「ラ・タ・タ・タム」のもとで黒髪の乙女と遭遇する。先輩は「ラ・タ・タ・タム」を黒髪の乙女に譲った後、「同じ一冊の本に手を伸ばす」というシチュエーションに耐え切れずに逃げ出す。その後、先輩は自分のあまりのヘタレっぷりを自虐しつつヤケクソでばら売りされていた「新輯内田百全集」を買い占めようとしたが、金が足りない。何もかも上手くいかずに地団駄を踏んでいたところで黒髪の乙女に再遭遇する。黒髪の乙女から金を借りて新輯内田百全集を買うに至る。その後、涼み台にて再び2人は遭遇し幾らかの会話を交わす。

映画

古本市の神様によって本来あるべき場所に戻ろうとする「ラ・タ・タ・タム」にしがみつき続け、先輩は「ラ・タ・タ・タム」を入手することに成功する。そのため先輩と黒髪の乙女が会話する場面はなく「ラ・タ・タ・タム」にしがみ付いて引きずられる先輩を黒髪の乙女が見かけるに留まっている。

補足

  • 黒髪の乙女と出会ってテンパって逃げ出すシーンと黒髪の乙女が「ラ・タ・タ・タム」を手に入れるシーンは第四章の黒髪の乙女が先輩のお見舞いに行くシーンの一部に取り込まれている。

第三章

偏屈王の舞台にてヒロインのプリンセス・ダルマを黒髪の乙女が演じる点、先輩が黒髪の乙女と共演するべく舞台を乗っ取る点は共通している。

小説

先輩は黒髪の乙女の気を引くために偏屈王の最終幕の開幕直前でパンツ総番長から偏屈王役を奪い取る。最終幕終了後、先輩と黒髪の乙女はパンツ総番長と須田紀子の再会に立ち会い、感動を共有することになる。

映画

先輩は偏屈王の最終幕にラブシーン(キスシーン)が存在することを知り、阻止するべく偏屈王の舞台へと向かう。舞台は開演前に先輩が舞台にたどり着くことはなく偏屈王役は予定通りパンツ総番長が務めることになる。その後、先輩がパンツ総番長を蹴り飛ばして主役に躍り出ようとするが、舞台の下に落っことされて失敗に終わる。最終幕内でパンツ総番長と須田紀子が結ばれるため最終幕以降の場面は存在しない。

補足

  • 映画では須田紀子の役柄は舞台監督に変更されており、パンツ総番長が追い求めていた人物ではない。

第四章

黒髪の乙女が李白のもとお見舞いに向かう点は共通である。

小説

樋口式飛行術を身につけ先斗町を飛び回っていた先輩は黒髪の乙女に会えるかもしれないという淡い期待を抱きつつ李白の電車にたどり着く。一方で古本市の神様から受け取った「潤肺露」を李白に届けるために李白の電車にたどり着く。「潤肺露」によって李白から追い出された風邪の神様は竜巻となり、先輩と黒髪の乙女を上空へと吹き飛ばす。偶然にも上空で黒髪の乙女と遭遇した先輩は自分の下宿先に着地しそのまま意識を失う。翌朝、先輩は「潤肺露」を受け取り、李白と過ごした夜の話を黒髪の乙女から聞かされる。その際、先輩は李白の快気祝いと古本屋巡りを黒髪の乙女と約束をする。

映画

黒髪の乙女が李白のお見舞いに行く時には「潤肺露」を持ってはいない。李白から「潤肺露」をもらった黒髪の乙女は先輩の下宿先へと向かう。黒髪の乙女が自身の元へ向かっていることを古本市の神様及び学園祭事務局長から聞かされた先輩は著しく混乱し逃げ出そうとする。先輩は黒髪の乙女が火鍋に落ちそうになる寸前のところでナカメ作戦の終わらせる決意を固め、黒髪の乙女を救出する。翌朝、黒髪の乙女に「ラ・タ・タ・タム」を渡し古本屋めぐりの約束をする。

補足

  • 潤肺露は風邪薬を飲んでも治らない風邪を治す妙薬である。
  • 小説では古本市の神様から潤肺露をもらう。
  • 映画では竜巻の原因が「孤独」であると推測される場面が存在する。
  • 小説では竜巻を起こしているのは李白のみだが映画では先輩も竜巻を引き起こしている。李白は自分よりも孤独な男が居ると発言している。